写真:軽井沢でアルペンスキーを楽しむ黒木啓太さん
軽井沢・東京の2拠点で生活する黒木啓太さん(54歳)は、軽井沢駅から徒歩6分ほどのヨーロッパリゾートスタイルのホテルロッソ軽井沢と、埼玉県小川町にある小川カントリークラブ、さらには、八ヶ岳では不動産業の経営を行う。
企業再生コンサルティングを長く手掛け、数年前から自身でも幅広く経営を手掛ける黒木さんだが、軽井沢での移住生活を満喫する姿は、とても漂々としている。
「友だちがいれば楽しいんですよ」
その暮らしを聞いた。
写真:黒木さんの経営する埼玉県小川町にある小川カントリークラブ
東京は月・火だけ
――軽井沢と東京の2拠点生活はどんなスケジュールなんでしょう。
黒木:月曜・火曜で東京のオフィスで仕事を済ませ、あとは軽井沢にいますね。
家族も週末に軽井沢にやってきて、日曜日に一緒に戻ります。
――それで仕事は回りますか。
黒木:いまは働き方も効率が良くなったので、軽井沢にいるほうが時間を無駄なく使える気がします。
軽井沢の自宅とホテルが歩いて15分くらいなので、お昼ご飯も家に戻れる距離ですし(笑)。
それぞれの現場に信用できる責任者が育ってくれているので。
――その2拠点生活は、いつ始めたんですか。
黒木:4年前、50歳になったときに、リゾートを自分でやる方向に舵を切ったんです。
ずっと経営再生のコンサルティングをしてきて、不良債権処理とか、ホテル立ち上げや別荘の販売などの経験やノウハウはあったので。
写真:ホテルロッソ軽井沢
ホテルオープン一年後にやってきたコロナ禍
――ご自身でホテル経営を始めてみて、どうでしたか。
黒木:違う苦労はありましたね。人を集めたり、教育やサービス改善など、これまで数字を見ながら私が行ってきた施策も、現場に入ると“あ、こんなに難しいんだ”ということはありましたね。
あと、オープン一年後にコロナ禍でしたから。
――おお…。どうしのいだんですか。
黒木:そのときは結構大変で。観光業がどうなるかわからなかったので、民間金融機関からの資金調達の話がドロップして。
ただ金融の再生コンサルティングも手掛けていたので、この状況下なら政府系の金融機関が動くはずだと思い、まだ運用方針が決まっていない政策公庫と打ち合わせを始めました。
多分、資本制劣後ローンの摘要は、日本で第1号に近かったんじゃないかな。8月運用開始で、9月には融資が終わってました。
写真:ホテルロッソ軽井沢
地域にとけこんだ“食事のないホテル”
黒木:あと、うちのホテルの特徴もあったと思います。
――というと。
黒木:うちのホテルは、食事が出ないんです。ヨーロッパの小さいホテルのスタイルで。
だから料理スタッフがいないことが、結果的に、あのコロナ禍の時期のオペレーションとしては助かりました。
そのスタイルにしたのは意図があるんですけど。
写真:ホテルロッソ軽井沢
――ちょっとわかるかもしれないです。私なんかは外で選んで食べたいから、ホテルの夕食が要らないときがあります。
黒木:そうなんです。
駅から徒歩6分くらいのところにあるので、美味しい地域のお店やレストランもいっぱいあるんですよ。
なので、この地域のレストランと連携して、みんなでこの軽井沢を盛り上げていきましょうという思いでこの4年間やってきました。
すると本当に地元の人たちと仲良くなって、いま僕は毎日、飲む人には困らない状況です(笑)。
――馴染んでますね、田舎暮らしに。
黒木:しかも、田舎といっても、東京から新幹線で1時間ちょっと、駅からも6分ですからね。
「もう軽井沢だけでいいかな」
――でも週2回は東京に行くんですよね。
黒木:僕は、本当にかつて東京大好きだったんですよ。銀座とか六本木とかの夜の街も。
でも、正直いまはもう東京に戻りたくないんですよ。軽井沢のほうがいい。
六本木を歩く若くてきれいな人たちの代わりに、こっちの夜は、タヌキの親子や狐やリスが歩いています(笑)。
いまは2拠点ですが、軽井沢だけにすることも考えています。
――こっちの1日はどんなスケジュールですか。
黒木:僕はスキーをやるので、この時期は朝8時半にスキー場に行って、10時まで滑ってから仕事に行ったりしますね。
僕のお客さんが来られるときは、受け入れしてご挨拶して。あとは、WEBで打ち合わせがほとんどです。
夜6時には家に戻ってきて、食事に誘われれば行くという感じです。
通勤時間がない暮らしなので、1日の時間がたっぷりあります。
人の話は一度情報を真っ白にして聞く
――移住を検討している人に何かアドバイスはありますか。
黒木:うーん。僕はですけど、興味のある人の話は、1回事前に知っている情報を真っ白にして聞く、というのは決めてます。
いろんな噂がある人でも本当は違っていたり、人それぞれ見る目は違いますから。
僕は軽井沢来て、すごく友だち多いんですよ。軽井沢には、友だちを作りに来たんだと思ってます(笑)。
――友だちを作る上で大切なことは。
黒木:遠慮をしないことですかね。
50歳を過ぎてくると、友だちの友だちが友だちだったりして、仕事上でも繋がったりして面白いですね。
あとは、地方に行ったら、最初のうちはお誘いを断らないことです。せっかく声をかけてくれるんであれば、行くべき。
軽井沢が、人を受け入れる文化があるという部分もあるとは思いますが。
――とっても充実の様子ですが、今後の課題は何かあるんですか。
黒木:僕の話というよりは、町として向かう方向の話ですが、基本的にはここは別荘文化なので、外から人を呼ぶためにはもっとアクティビティを増やして遊べるようにしなきゃいけない。
いまは、お孫さんを連れてきても、遊ぶ場所が少なかったりします。
軽井沢の町だけで遊ぼうとしても限界があるので、周辺のワイナリーを楽しんだり、中山道をバイクで回ってみたり、全体を巻き込んでやっていかないといけない。その中で我々が何をできるか、ということを考えています。
――ありがとうございました。今度軽井沢に行くときは、ホテルロッソに泊まってみたいです。
黒木:ぜひ。友だちを紹介します(笑)。
写真:軽井沢でスキーを楽しむ黒木啓太さん
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取材・文:槌谷昭人